日本ブリーフサイコセラピー学会 第23回Tokyo駒澤大会 2013 8/30〜9/1

ワークショップ

日時
9月1日(日) 10:00〜16:00(昼食休憩)

本大会ではワークショップを企画しております。お申し込みの際は、申し込み書に第3希望まで必ずお書きください。申し込み状況により、受付を締め切るコースが出てくる場合がございますので、ご注意ください。

ワークショップは、お申し込み時点で第3希望まで伺います。また、ワークショップはそれぞれ先着順でお申し込みを受け付け、定員になり次第お申し込みを締め切らせていただきますので、お申し込み結果につきましては参加案内証にてご連絡いたします。なお、受付締め切り後は、当日の受付のみとなります。
第1希望を受講できない場合もございますのでご了承ください。

※当ワークショップは、臨床心理士資格更新ポイントとなります。


ワークショップ申し込み締め切り:2013年7月16日(火)

予約参加申込み

大会ワークショップのご案内


1 ブリーフセラピー入門 - 解決志向アプローチからミルトン・H・エリクソンをたどる
会場:駒沢キャンパス8号 館1階8−150教室
中島 央 (医療法人横田会 向陽台病院)
田中 ひな子(原宿カウンセリングセンター)
 ブリーフセラピーとは、より効果的な対人援助をめざす心理療法であり、いくつかのアプローチがあります。このワークショップでは、シンプルでわかりやすい解決志向アプローチから、その源流となっているミルトン・H・エリクソンの臨床と催眠までたどることによって、ブリーフセラピーの基礎を学びます。
 講義とデモンストレーション、そしてエクササイズを行う予定です。明日から使える技法とともに、「人はそれぞれユニークな存在であり、常に変化している」、「肯定し、間接的であること」というブリーフセラピーの方法論を具体的にお伝えしたいと思います。ブリーフセラピーを初めて学ぶ方はもちろんのこと、すでにブリーフセラピーを実践している方で、さらに催眠やミルトン・H・エリクソンのエッセンスを取り入れてみたいと思っていらっしゃる方のご参加をお待ちしております。
2 教師と効果的にコラボレートする秘訣〜アドバンス文化へのジョイニングとエクステンド文化への誘い〜
会場:深沢校舎【講義室2-1】
柴田 健(秋田大学)
秋山 邦久(常磐大学・越谷心理支援センター)
 スクール・カウンセラー(以下SC)が、平成7年に日本の学校現場に導入されて、今年で18年を迎えることになりました。あと2年で成人式を迎えるこの制度は、日本の学校制度の中にほぼ定着したと見ることもできます。公的な機関が行っている多くの調査でも、おおよそはこのSC制度に対して好意的な評価が示されています。ところが、実際に現場の教員と話しをするとそれらの評価とは異なり、SCへの評価はさほど高くなかったり、正当な評価をされていなかったりすることの方が多いのも事実です。
 教育現場でより効果的で効率的に仕事を進めていくためには、教員とのより良いコラボレーション(協働)が必要と考えます。この教員のSCに対する評価の低さや不当さを、教員側の問題として捉えて学校側に変化を求めるのではなく、SC側が積極的にかかわりを工夫することにより教員との関係性を変化させていく視点が重要です。 今回は、このSC側のジョイニングの工夫について、教育と心理の文脈の違いに焦点を当てて考えていきたいと思います。教師は,前に進むことつまりアドバンスを任務とする職業です。一方,心理職はその場でふくらますエクステンドに重きを置きがちになる傾向があります。そこにそれぞれの職業文化が出来上がっているといえるでしょう。
 この異なる文化のコラボレーションを構築するための工夫について、ナラティブセラピーの立場と利用アプローチの立場からいくつかのワークを通して提示し,このことについて考えていきたいと思います。
 参加される方々も是非ともご自身のアイディアをお持ちください。参加者全員で、全く新しい関係構築のアプローチを作り出してみませんか。
3 とある臨床医の技法目録(仮)
会場:駒澤キャンパス【1号館1-202】
佐藤 克彦(東京都教職員互助会 三楽病院)
 ブリーフセラピー誕生の裏事情にアメリカの医療制度がある、と聞いた。曰く、例えば3回までのセッションには保険会社からお金が出るが、4回目以降はクライエントが全額を負担せねばならぬ、と。このようなセッティングでは当然、クライエントもセラピストも、(それが可能かどうかは別として)、短期間で解決できるようなセラピーを求めざるをえない。どうもそういうことらしい。

 私の勤務先では、初診の診察時間は約1時間も確保されている。大変ありがたいことだ。しかし2回目以降は打って変わって数分間しか提供することができない。大変ありがたくないことだ。このようなセッティングでは当然、(患者さんはともかく)医者は、(それが可能かどうかは別として)、約1時間で解決できるような診察を求めざるをえない。様々なセラピーを根なし草のように放浪してきた私がブリーフセラピーに落ち着いた裏事情とは、どうもそういうことらしい。

 そんなことをぶつぶつと考えている輩が冷や汗とあぶら汗をかきながら自分なりに会得してきた・・・つもりになっている技法の数々を、できる限り幅広く、可能な限り分かりやすく、時間の許す限り暴露し続けることで、少しでも実践家の皆さんのお役に立てれば光栄です・・・ナドト夢想シテイルとある臨床医 が、何の因果か、このたび講師をさせていただくことになりました。こんな講師でもよろしければ、どうぞ皆さん、よろしくお願いいたします。
4 続・常識的心理療法の工夫と実際を語る
会場:駒澤キャンパス【1号館1-304】
森山 敏文(広尾心理臨床相談室)
大山 みち子(武蔵野大学)

 主に摂食障害の有効な治療方法として、下坂幸三の提唱した「常識的心理療法」は、その後私たちの日々の臨床において、家族面接・個人面接を通じ患者さんとのいわゆる「共通感覚」を大事に考えた、実効のある心理療法として発展し醸成されてきました。
 治療者が、対象相手と自分との間に生じていること、現象、体験はもとより、どんなときに、どんな風に、どのくらいの程度、指示・解釈や言辞的な介入をすることがよいのか、あるいは我慢・待ちの姿勢がよいのかどうか、絶えず思い悩むものです。すなわち、今ここの臨機応変の、治療上の技術であり、援助に帰する態度を模索し続ける、ということです。
 このワークショップでは、常識的な心理療法について、配慮と工夫の実際を紹介します。

5 臨床で使うアドラー心理学
会場:駒澤キャンパス【1号館1-203】
鈴木 義也(東洋学園大学)
深沢 孝之(心理臨床オフィス・ルーエ)
 アドラーの名前は臨床心理学を学んだ人なら誰でも知っているくらい歴史もあって知名度も高いのに、実際には、研修に出たことはないし、周りで使っている 人を見たこともないというくらい知られていない。学生時代に教科書で読んだだけという人が圧倒的多数である。
 アドラー心理学は子育てや学校教育でも広く使われ、日本でも臨床家より教育 者に認知されている。しかし臨床においても新フロイト派、認知療法、家族療法、 遊戯療法などに影響を与えてきた経緯もある。現在では解決志向や構成主義やナ ラティヴセラピーとミックスして用いる実践もなされている。その思想的枠組み はブリーフセラピーと類似するところも多々あり、現場でも併用して用いること ができると思われる。
 今回の研修はアドラー心理学の理論とともに、幾つかの技法を演習し、臨床現 場での選択肢を広げられるような「役立つ臨床アドラー心理学」を紹介したい。

-内容-
アルフレッド・アドラーとはどんな人?
アドラー心理学の略史
基礎理論(目的論、対人関係論、認知論、全体論、個人の主体性)
目的から考える人間理解:不適切な行動の目的、ライフスタイル・アセスメント
勇気づけ
臨床思想としての共同体感覚 
6 境界性パーソナリティ障害などで感情調節が困難な方のための支援の工夫:弁証法的行動療法、スキーマ療法などから学ぶ
会場:駒澤キャンパス【1号館1-204】
遊佐 安一郎(長谷川メンタルヘルス研究所)
菊池 安希子(国立精神・神経医療研究センター)

パーソナリティ障害、発達障害、双極性障害、摂食障害、物質依存障害、PTSDなどの精神科の診断を受けている方の多くは、自分の感情の調節が困難なためにとても辛い体験をしています。人は圧倒されるような感情を体験すると、それがとても辛いので、その対処のための努力が第三者からは衝動的だと見えるような、怒りの爆発、自傷、依存行動などとして現れることも多々あります。そのために支援者も、ご苦労をされるために、問題患者とか困難事例と呼ばれることも多いと思います。(実際に問題を感じて、困難を経験しているのは支援者よりもご本人だと思うのですが。)
 弁証法的行動療法では、問題をご本人の感情的に傷つきやすい傾向と、環境(特に周囲の人)からの非承認(誤解、無理解、拒否と感じられるような反応)の相互作用のために、ご本人の感情調節が非常に困難になっていると考えて、さまざまな支援の工夫を発展させてきています。その結果、弁証法的行動療法は、現在では、その効果が世界で最も多くの科学的エビデンスで支持されている治療法として、欧米では広く受け入れられています。
 今回は弁証法的行動療法を中心に、感情調節が困難な方の理解の仕方と、支援の実際について、体験学習も交えて紹介したいと思っています。また時間が許せば、スキーマ療法、MRI,ソリューション、ナラティブなどのアプローチとの比較検討や家族支援のあり方についても一緒に考えることができると良いと思っています。

7 心理療法としての催眠の『配慮』と『工夫』-治療の場としてのトランス空間作りとコミュニケーション・ツールとしての催眠現象の利用-
会場:深沢校舎【講義室1-2】
松木 繁(鹿児島大学)

 催眠療法は心理療法の「打ち出の小槌」と言われるくらい、これまでに多くの心理療法を産み出してきています。それは、催眠状態という現象の中に人の生き様のさまざまなものが“多重的に”,“多層的に”内包されているからだと私は考えています。
 今回のワークショップでは、そうしたクライエントのリソースを効果的に引き出すための「配慮」と「工夫」を、“治療の場”としてのトランス空間作りの工夫−例えば、「共感的な関係性」と「相互作用」の観点から−と、催眠現象の利用を効果的に行うための「工夫」−例えば、コミュニケーション・ツールとしての催眠現象利用の観点から−とに分けて考えてみたいと思います。
 当日はライブデモと参加者どうしでの催眠誘導の相互実習を中心に、臨床現場で使える催眠の生の実感を味わってもらいます。今回のワークショップを通して皆さんは、催眠療法にまつわる操作的で権威的で支配的な印象が薄れ共感的で相互的な印象が強くなるでしょう。そして、催眠が日常的で誰にでも起こり得る現象を扱う臨床に利用可能な科学的な治療法であることを実感してもらえることと思います。

8 知ってみよう、やってみよう、オートポイエーシス
会場:深沢校舎【講義室2-2】
田中 究(関内カウンセリングオフィス)
安江 高子(関内カウンセリングオフィス)

 「最前線」の支援者にとっては、役立つはずの質問法も、効果的といわれる技法も、実行しさえすればうまくいく、というものでは必ずしもありません。臨床実践には不確実さが満ちているからです。
 しかし、だからこそ、支援者は計算されたものを越えでて、実情にフィットしたオリジナルな実践を形作ることができる、とも言うことができます。現場に身を置く支援者が切に求めるのは、そうした「配慮と工夫」を産み出すための羅針盤ではないでしょうか。
 そんな「迷い、悩みながらも歩を進める現場の支援者」にそっとヒントを与えてくれるのがオートポイエーシスだと、私たちは感じています。
 本ワークショップでは、システムを産出プロセスのネットワークから定義するオートポイエーシスの生みの親、ウンベルト・マトゥラーナから基本的なトピックを学び、意味論とコミュニケーション論を含むニクラス・ルーマンの社会システム論を経由し、河本英夫のアイディアを取り上げます。そして、そのエッセンスをエクササイズとともに体験的に追いかけてみたいと思います。
 不確実さの中に支援者のよりどころとなるもの探し出し、より効果的な支援を目指す皆様のご参加をお待ち申し上げております。

9 子どもを対象としたしシステムズアプローチ実践の工夫(応用編)
会場:駒沢キャンパス8号館1階8−151教室
衣斐 哲臣(和歌山県子ども・障害者相談センター)
加来 洋一(山口県立こころの医療センター)

 システムズアプローチ(SAと略)の実践者を対象としたワークショップです。SAは、コンテンツよりもコンテキストを重視し、個人よりも個人間の人間関係を扱うことに特徴があります。講師2人は以前、同時期にこのアプローチの研修を受けていた関係からお声がかかり、十数年の時を経てコラボが実現しました。2人の臨床実践の現場は、かたや(加来)精神科医療、かたや(衣斐)児童相談所で、SAをベースにしながらも多くの応用形や独自のスタイルを作り上げてきました。
 したがって、本ワークショップでは、SAの基本的な認識論を踏まえながらも、講師の独自のスタイルを語ります。そして、参加者の皆さんにもご自分の実践スタイルをあらためて見直し語る機会にしていただこうと思います。
 具体的には、SAのものの見方として、クライエントの人間関係や「いま、ここ」で起きている出来事のコンテキストや相互作用を、セラピスト自身を含めて俯瞰しようとする視点があります。いわゆるメタポジションから見る視点です。この視点に立って、具体的な事例を見立てたり介入したりする体験をしていただきます。そして、他の参加者の見立てや介入のしかたとの差異も体験されるでしょう。
 このように、一方的な講義中心ではなく参加者同士の協働によるワークを取り入れた研修を考えています。…かといって構える必要はありませんし、自分の実践が必ずしもSAと思っていなくても、子どもを対象とした臨床に関わる実践をお持ちのかたであれば歓迎です。もしかしたら、大会の最終日、夏の終わりに、Tokyoで、目から鱗が落ちる体験ができるかもしれません。

10 スケール「7」: 解決志向ブリーフセラピー実践者アドバンストレーニング
会場:深沢校舎【講義室2-3】
原口 葉一郎(解決志向アプローチ研究所)

 スケーリング・クエスチョンにおける「7」の答えがクライエントのセラピーからの自立を意味することが多いことは、SFBT実践者にとっては周知の事実でしょう。よって治療者・援助者にとっても、それは終結のサインでありゴールの指標。今回はクライエントの「7」を構築するための術を学ぶ機会としましょう。
 さて、解決志向ブリーフセラピーの「実践」はノット・イージーよ……とInsoo Kim Bergは教えてくれました。BFTCで創出された様々なアイデアやポスチャー(態度)、テクニックは解決を創り上げていく為の最小限のパーツにほかなりません。よって、彼らが提示してくれたパーツをクライエントに合わせてデザインできなければ用は足しません。パーツを「どのように使うのか」がSFBT実践者の力量であり、鍛錬といえるでしょう。
 そこで、今回のワークショップはSFBTの基本ソースの実践展開、運用のスキルアップに焦点を合わせたアドバンス・トレーニングを行いたいと思っています。既に解決志向ブリーフセラピーの実践をしている方の参加を求めます。
 最後に、ワークショップでは実践展開における「困った…」「どうしよう…」という困難を可能な限り取り上げたいと思いますので、事前に下記メールアドレスに内容を送ってください。
scale7@kaiketsuken.jp

・Clが質問に答えてくれない
・再発した
・ポジティブな話しをClに敬遠される
・同僚たちに解決志向を理解してもらえない
・問題志向の援助者からケースを引き継いだ時・・・・
・SFBT実践、伸び悩み中

などなど、簡単な内容で結構です。有益なワークショップにしましょう。

11 ナラティヴ的質問工房へようこそ
会場:駒沢 キャンパス8号館1階8−152教室
市橋 香代(東京大学付属病院)
坂本 真佐哉(神戸松蔭女子学院大学)

 ナラティヴ・セラピーといえば、「外在化する会話」がよく知られていますが、この他にもいろいろな会話の展開があります。そして,この会話の展開を方向づけ,特徴づけるのが“質問”であり,“問いかけ”であるといえるでしょう。
 問いかけは,臨床の場においてはとても強力な介入であるといえます。答えを求めるというある種の強制力が働くだけではなく,どのような種類の答えを期待するのか,という援助者(質問者)のメッセージやスタンスを色濃く反映するからです。
 山登りの一歩一歩と同じように問いかけのひとつひとつも,そのときそのときで達成すべき目標があるものの,最終的にはナラティヴ・セラピーの向かうべき目標に近づくべく練られています。ガイドとしては,大きすぎる一歩よりもより確実な一歩を歩んでもらうように問いかけたいときもあれば,ときには思い切り踏み出さないと乗り越えられないような一歩のごとく問いかけたいときもあるでしょう。1度のチャレンジでは踏み出せなくても、異なる角度や距離による再チャレンジで乗り越えることもあるでしょう。あとでもう少し慎重に歩んだ方がよかったところや、多少でも回り道した方がより確実で負担が少なかったのでは,と振り返ることもあるでしょう。しかし,いずれにしろ苦労して手ずから創り出した問いかけは,繰り返し,さらに洗練した形となって使用することができるはずです。
 このワークショップでは「外在化ではない」質問や「外在化のプロセスにまつわる」問いかけなどのナラティヴ的な質問を積み上げながら、ナラティヴの幅広い雰囲気を体感していただけたらと考えています。
 共に工房で汗を流しましょう。もちろん我らが工房は大量生産のオートメーションではなく、超零細家内手工業であります。

(敬称略:順不同)

日本ブリーフサイコセラピー学会